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2021-10-09

天にいちばん近いところで、手作り弁当を食う 〜 雲が美しい岩木山登山 〜


 

数年前までは、この69のカーブを駈け上がるヒルクライムレースに参戦していた。

参戦とは、ちょっとカッコつけすぎか。参加というのが実力にあった言い方かもしれない。

それにしても、この延々と上りが続く激坂をロードバイクでひたすら上り続けるというのは、我ながら正気の沙汰ではない。最近、愛車となった軽自動車も唸りを上げている。

 

天気予報では晴れの予報だったが、空全体に薄く雲がかかっている。しかし、かなりの高さにあるらしく、岩木山の頂はくっきりと姿を現していた。

先週の十和田湖一周に続き、この日は岩木山一周の追悼ライドを考えていた。しかし、土曜日の今日は娘が休みだ。娘をほっぽり出してツーリングというのも申し訳ない。

(そうだ、久しぶりに岩木山に登ろう)

私はまだ布団にくるまっている娘を叩き起こし、叫んだ。

「岩木山に行くぞ!」

 

彼女の本心としては、私がどっかにツーリングに出かけてくれた方がいいのだ。自宅で自由気ままにiPad三昧できるから。案の定、半分ふてくされた表情で後部座席で目をつぶっていた。

しかし、妻が旅立ってからは、明らかに自宅に引きこもることが多くなったし、二人で遠出したこともなかった。

 

八合目より頂上を望む。

 

69のカーブを上りきると、八合目の駐車場は車で溢れていた。

じつはスカイラインのゲートで20分ほど待たされた。紅葉を満喫できるこの時期、考えることは誰もが同じだ。コロナ禍であっても、山に登るというのは罪の意識は薄い。

面倒くさそうに車から降りた娘はカーブに酔ったらしく、さらに機嫌は悪くなっていた。

 

数年前に二人で登った時は、リフトを使わずに登ったが、「今は絶対、無理!無理!」と彼女が言ったのでリフトを使うことにした。正直、自分でもあまり自信はなかったのだ。

岩木山神社や弥生から自分の脚だけで登る人たちにとって、八合目からリフトを使って登るのは、登山のうちに入らないだろう。

しかし、今日はそんなことはどうでもいいのだ。

娘と二人で頂上まで登って、そこで昼飯が食えれば、それでいいのだ。

 

空全体に雲が流れているが、遥か高いところにあるせいか、リフトからでも津軽半島は権現崎の端までくっきりと見え、その向こうには北海道の山並みを望むことができる。

生まれ故郷の鯵ヶ沢の町も見える。小さい頃は、毎日のようにあちらからこの山を見ていた。冬休みの宿題では、必ずこの山を描いていた。

 

リフトを降りると、そこにも多くの人がいた。本格的な登山スタイルをしている人もいれば、軽装の人もいる。

私たち二人も決して、登山スタイルとは言えない。が、少し気分を上げるために私は70年代の古い「L.L.Bean」のマウンテンパーカを羽織った。マウンパといえばシェラが有名だが、昔の「L.L.Bean」は裾が広めで、バランスが好きなのだ。実は4枚も持っている。

娘は、冬の通学で着ていたノースフェイスのマウンパにしようと思ったが、ちょいとヘビー過ぎる。

2年前に、妻が買ってくれた「マークジェイコブスキッズ」のフラワープリントのアウターを着せた。少し小さくなったけど、ガリ子の娘はまだ着れる。

 

急な岩場を登るガリ子。

 

岩木山の登山は、「過酷」というイメージはないが、急峻な岩場もそれなりにある。油断は禁物だ。大きな岩に手をつきながら、私たちは無理せずにゆっくりと登った。

ところどころにある、少しだけ広くなったところで休憩をとる。娘のリュックに入れてあった冷たいお茶をかわりばんこに飲む。私のウェストバックには昼飯が入っていた。

鳳鳴ヒュッテを過ぎると、足場は険しくなり、勾配もきつくなる。

さらに20分ほど、ひたすら登り続けると、やがて視界が開けた。

 

鯵ヶ沢から津軽半島。そして北海道を望む。

 

弘前の街。遥か向こうに八甲田連峰。

 

南側には白神山地。

  

復路の安全を祈願。

 

生まれ故郷をバックに。雲が美しい。娘撮影。

 

頂から、360度。ぐるっと見渡す。

津軽の中心にあるこの山は、まさにパノラマで津軽一円を実感することができる。

「なんか、すげ~楽しい!」

八合目ではご機嫌斜めだった娘も、素晴らしい風景と登りきった達成感に、充実した表情をしていた。

 

「よし!昼飯食おう!」

私たちは、弘前の街並みが見える場所に座った。私のウェストバッグからおにぎりの入った袋と、おかずの入った弁当箱を取り出した。

朝、娘を叩き起こした後に、一緒に弁当を作った。

筋子が入ったおにぎりを3個。醤油をたらした卵焼きと、ソーセージを焼いたヤツ。どれも簡単なもので、おにぎりと卵焼きは形がいびつだ。

 

いびつなお弁当。食べかけ、すいません。

 

「んん~ん!美味しい~!」と娘が言った。

たいした味ではないのは、食べている自分でもよくわかる。でも、自分の脚で登った後の昼飯は、美味いのだ。

3個のおにぎりを1個半ずつ食べて、卵焼きとソーセージもあっという間にたいらげた。

 

 

昼飯を食べた後、二人はしばらくの間、頂上にいた。

津軽でもっとも天に近い場所にいた。

 

私たちは、頂上にあるシンボルの鐘を大きく鳴らした。

そして美しい雲が流れる天に向かって、手を併せた。

 

 

 


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