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2022-08-14

「 初盆 」


 

明け方、足元を誰かがポンポンと叩くのを感じて目が覚めた。

お盆だから妻が帰ってきたのだろうか…と思い、足元を見た。

飼い猫のティのしっぽが、ポンポンと繰り返し私の足を叩いていた。

 

妻が亡くなったのは昨年の7月だったが、昨年のお盆の時はまだ四十九日が終わっていなかった。

だから、今年のお盆が「初盆」となる。

初盆ということもあり、数組の来客の予定があった。13日から15日あたりまでは、娘と一緒に自宅にいることにした。

 

13日の夕方、窓辺で二匹の猫が珍しく仲良く並んでいた。

いつもは喧嘩ばかりしている二匹の猫が、どういうわけか左右対称に行儀よく並んでいた。

彼らには、帰って来る者の姿が見えるのだろう。

 

 

19時を過ぎた頃、隣にある妻の実家の前で、火を焚いた。

妻の実家では十数年前まで、お盆で火を焚くための薪を売っていたらしい。

その頃の薪がまだ残っていて、それは年月が経っているせいか、乾燥していてよく燃える。

私は、ゆらゆらとする火を眺めながら、ビールを飲んだ。

 

和徳の大通りでも、迎え火を焚くところは少なくなった。

いや、津軽ではほんの数日前、大雨による大きな災害があり、今年はお盆どころではない地域もあるだろう。。

 

この3年は、新型コロナウィルス、ウクライナ戦争、そして自然災害と、我々があまり経験をしたことがないような事象が続いている。

今後、人間がどのように生きていけばよいのか?…を試されているようにすら感じる。

 

 

戦争はもちろんだが、

試験とか受験とか、そういった競争をもひどく嫌っていた妻は、どう見ているのだろうか。

 

今年、娘はその受験生になった。

「今年、受験だべ。勉強しなくていいの?」

つい、そんな言葉が喉まで出かかる。が、ふと思いとどまり、その度に自分が考えてしまう。

そんな日々が続いている、2022年の夏。

 

ゆらゆらとする火の向こうにある娘の表情を眺めながら考える。

少しだけ、小さくなった炎を眺めながら考える。

 

 

 


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