「 初盆 」
明け方、足元を誰かがポンポンと叩くのを感じて目が覚めた。
お盆だから妻が帰ってきたのだろうか…と思い、足元を見た。
飼い猫のティのしっぽが、ポンポンと繰り返し私の足を叩いていた。
妻が亡くなったのは昨年の7月だったが、昨年のお盆の時はまだ四十九日が終わっていなかった。
だから、今年のお盆が「初盆」となる。
初盆ということもあり、数組の来客の予定があった。13日から15日あたりまでは、娘と一緒に自宅にいることにした。
13日の夕方、窓辺で二匹の猫が珍しく仲良く並んでいた。
いつもは喧嘩ばかりしている二匹の猫が、どういうわけか左右対称に行儀よく並んでいた。
彼らには、帰って来る者の姿が見えるのだろう。
19時を過ぎた頃、隣にある妻の実家の前で、火を焚いた。
妻の実家では十数年前まで、お盆で火を焚くための薪を売っていたらしい。
その頃の薪がまだ残っていて、それは年月が経っているせいか、乾燥していてよく燃える。
私は、ゆらゆらとする火を眺めながら、ビールを飲んだ。
和徳の大通りでも、迎え火を焚くところは少なくなった。
いや、津軽ではほんの数日前、大雨による大きな災害があり、今年はお盆どころではない地域もあるだろう。。
この3年は、新型コロナウィルス、ウクライナ戦争、そして自然災害と、我々があまり経験をしたことがないような事象が続いている。
今後、人間がどのように生きていけばよいのか?…を試されているようにすら感じる。
戦争はもちろんだが、
試験とか受験とか、そういった競争をもひどく嫌っていた妻は、どう見ているのだろうか。
今年、娘はその受験生になった。
「今年、受験だべ。勉強しなくていいの?」
つい、そんな言葉が喉まで出かかる。が、ふと思いとどまり、その度に自分が考えてしまう。
そんな日々が続いている、2022年の夏。
ゆらゆらとする火の向こうにある娘の表情を眺めながら考える。
少しだけ、小さくなった炎を眺めながら考える。
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