ツール・ド・ツガル / 『 2023 初ライド 』で気づいたこと
新年度の目標を掲げ、その翌日に走り出す。
というのは、実行力があるというよりも「心がはやる中学2年生」に近い。
それでも、年寄りに思われるよりはマシだ。
あまりにも晴天が続いたせいで、家の中にいることに少々罪悪感も感じていた。
ちょっと遅い時間帯ではあったが、物置からロードバイクを引きずり出した。
4ヶ月ほど乗っていなかったので、タイヤにしっかりと空気を注入し、チェーンには油を差した。
走り初めは「岩木山神社」と決まっている。
少しだけ日が傾き始めた西の空に向かって走り出した。
体力が落ちていること、身体が重いこと。
それは走る前からわかりきっていたことだったが、それでも走り始めるといろいろなことに気づく。
2月にドカ雪が2回ほどあったが、路肩に残雪はほとんどなく、今シーズンの雪はそんなに多くはなかったことに気づく。
3月から4月にかけては、かなり暖かい日が続いたせいか、道端の桜の木がほんのりとピンク色になっていることに気づく。
春先は山から吹き下ろす向かい風が多く、大きくなった身体は、風の抵抗をより強く受けることに気づく。
車に乗っていると速すぎて気づかなかったり、歩いていると遅すぎて目に留まらなかったり。
そういうことが意外に多いことにも気づくのだ。

百沢バイパスより津軽富士を望む
この時季の岩木山は濃淡のコントラストが美しく、夕刻が近づく時間帯はそれがより際立つことに気づく。
長い時間、雪に覆われていた路肩の草々が、まるで髭のように地面になびいていることに気づく。
しばらく乗っていなかったせいか、一瞬ギアチェンジのやり方を忘れていて、脳の衰えがあることに気づく。
しかし意外にも、百沢へと向かうヒルクライムの仕方を身体が覚えていることにも気づく。
ほとんど休むことなく、ロードバイクは神社に到達した。

傾きかけた陽が美しい岩木山神社
神社にも雪はほとんどなく、参道を行き交う人が何人かいた。
鳥居越しの岩木山に向かって手を併せ、今年一年の家族の健康を祈願する。
そういえば、これが今年の初詣だった。
神社の向かいにある商店でトマトジュースを買い、一気に飲み干した。
さあ、暗くならないうちに帰ろう。
来た道を一気に駆け下りる。
この時季のこの時間帯の下りは、やはり風が冷たいことに気づく。
この時季の路肩には、小石や砂が多いことに気づく。
慣れた道とはいえ、慎重に走らねばならぬ。
弘前の街中に入ると、ちょうど帰宅ラッシュで道は混んでいた。
車列と歩道の僅かな間を走り抜けるのは、危険が伴う。
とくに文化会館を過ぎ、和徳へと向かう道は路面の状態が悪く気を使う。
私はママチャリ並みのスピードで、ゆっくりと歩道を走った。
自宅まではあと少しだ。急ぐ必要もない。
少しだけガタガタとする感触があることに気づいた。
あぁ…この感触。ロードを乗る自分の身体は、この感覚を確かに覚えていた。
西の空が真っ赤に燃えていることに気づいた。
私は、後輪がペチャンコになったロードバイクを引きながら、自宅前の横断歩道をゆっくりと渡った。
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