「 入学式 」
先月の卒業式とはうってかわって、この日は朝から雨が降っていた。
結婚式であれば「雨降って地固まると言いますからね〜」という決まり文句が出るのかもしれないが、入学式ではなんと言うのだろう。
「雨など降るも、をかし」だろうか。学がないので、これくらいしか思い浮かばない。
正門の前で、娘と友達の記念写真をパチリ。
観測開始以降、最も早い開花となったこの日、正門の桜の木にもピンク色がちらほらとあった。
入学式の会場となっていた体育館は、校舎の4階にあった。
相変わらず知った顔はなく、私は4階までの階段を黙々と上った。
クラス別に椅子が並べられていて、すでに3分の2ほどの椅子は保護者で埋まっていた。
高校の入学式は、そんなに保護者は来ないイメージがあったが、ほとんどの保護者が来ているように見えた。
しばらく待った後、新入生が入ってきた。
元々が女子校だったせいか、女子生徒がやや多い。
クラスごとに、担任の先生が全ての生徒の名前を読み上げる。校長先生から入学許可が宣言される。
新入生による宣誓、校長先生による式辞が終わると、校歌が披露された。
会場には2、3年生はいない。女子生徒がひとり、壇上に立っていた。
ピアノ伴奏に合わせ、校歌を歌い始めた。初々しく、清々しいソプラノだった。
谷川俊太郎 作詞、中田喜直 作曲とは、なんて贅沢な校歌なのだろうか。
校歌は二度ほど変わっているらしく、おそらく現校歌は、共学になったのをきっかけに新たに作られたのかもしれない。
難しい言葉は並べられてはおらず、でも、心に染み込んでいくような素晴らしい詞だと思った。
シンプルな旋律ではあるけれど、少しだけリズムに変化があり、心に残る美しい曲だと思った。
式を終えると、各クラスに集まり、担任の先生から今後に向けての説明があった。
どうせ保護者も知らない人ばかりだろう…と思っていたが、店で働いていた頃、仲の良いお客さんだった人がいたり、写真仲間の人がいたり、チャリ仲間がいたり。
意外にもいるものだ。それだけ自分が長く生きている証拠なのかもしれない。
帰り際、雨にもかかわらず正面玄関の前では、記念写真を撮るための行列がずらりとあった。
娘に「撮る?」と訊くと「別にいい」と言うので、真っすぐ家に帰ることにした。
帰宅すると、少し雨が上がっていたので、家の前で写真を撮った。
小学校、中学校の時の入学式は、母娘のツーショットがあった。
今はそのショットを撮ることはできない。
少しだけはにかんだ彼女の笑顔に、少しだけ妻の面影を見た気がした。
いろいろ大変なこともあるだろうけど。
勉強はほどほどでいいので、自分が思うように楽しんでやってくれ。
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