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2018-12-23

八戸の街 と 「FRINGE EAST」


八戸の空はキリッと澄み切っていた。系列店「FRINGE EAST」には月に一度くらいの頻度で来ていたが、3ヶ月ほど間が空いただろうか。

随分と久しぶりな気がする。  

店の扉を開けると、相変わらず雑多な雰囲気が私を迎えてくれた。

以前にも店のことを紹介したが(2017年5月17日ブログ「FRINGE EAST / hachinohe」)、この店はデザイナーズからカジュアル、アウトドア、そしてクロージングと、狭い店舗の中にいろんな要素がごった煮のように詰め込まれている。

それでもオープン当初から比べると、カジュアルの比率は少し小さくなり、デザイナーズやクロージングのバリエーションが広がったように思う。

これも洋服屋として成長した証ではないだろうか。

十数年前。今は亡くなってしまったが尊敬する叔父が八戸に住んでいた。

私は新しい店をつくるために叔父の家に何日も泊めさせてもらい、毎日のように現場に通い、什器を作ったり、ペンキを塗ったり、タイルを貼ったりした。オープン当初、店内は「ハリウッドランチマーケット」をはじめとしたカジュアルのアイテムで占められていた。

カジュアルを得意とする店長岡沼くん。今現在も、彼の濃いキャラクターが店内の至るところに散りばめられている。

通常、年月とともにカジュアルからデザイナー系に店舗が移行していくのは、よくあることだ。そして、店内もソリッドでミニマムな内装や雰囲気に変化していく。

ところが、この店は昔のまま…いやある意味、岡沼くんの濃いキャラが増している気がする。成長していないのか、変化し続けているのかはよく分からないが、青森県内でもキャラの濃い店のひとつになったと思っている。

岡沼くん

前回のブログでも紹介した八戸のイケメンカリスマスタッフNo.1の水上くん。

ファッションの悩み、それとも恋の悩みなのだろうか。今日も彼は、八戸の若者の悩みをクールな顔をして聞いていた。

水上くん(左)

インターネットの情報が溢れる昨今、直接顔を合わせて話のできるスタッフが店にいる。

それが何よりも実店舗の強みではないだろうか。バーチャルに慣れすぎて、人とのコミュニケーションが苦手と言われる最近の若者だが、「話を聞いてもらったり、いろいろ教えてもらったり」という直接のコミュニケーションを求めている若い子は案外たくさんいると思う。

店に立つ人間として、それを忘れてはいけない。スタッフが若かろうが年配であろうが、お客さんが年配であろうが若者であろうが、それは関係のないことだ。

年末に向けて、店頭の商品の状況をチェックし、そしてこれからの方向性などをスタッフのみんなと話した。

店での仕事を終えて、私は街の中心街の方へ足を向けてみた。

………………………………….

店の工事をしていた頃は、すぐ近くに「イトーヨーカドー」があった。

その向かいには有名なファッションビル「ヴィアノヴァ」があり、中心街の通りには「Rec.」という若者に人気のビルもあった。

土日ともなると中心街は多くの人で溢れていて、弘前とは全く違うと感じた。八戸に出した新しい店には、多くの若者が押しかけてくるだろう。そう思った。

まもなくして「イトーヨーカドー」は郊外に移転した。残された建物は「cino」として今でも運営されているが、正直活気があるとは言えない。

「ヴィアノヴァ」もかつての賑わいはあまり感じられないし、「Rec.」はいつの間にか取り壊されていた。

「FRINGE EAST」の周りにも、何軒もの洋服屋があり、毎年のように新しい店がオープンしていた。しかし、新しい店ができる度に他の店がなくなり、気がつくとほとんどの洋服屋がなくなっていた。

中心街を歩く人々の姿は、若者よりも高齢の方が目立つようになり、弘前の土手町に似たような雰囲気になった。

それでも「FRINGE EAST」は場所を変えることなく頑張り続けた。大学時代にバイトをしていた水上くんが、正スタッフとなり、商品構成も積極的にレベルの高いものを揃えるようにした。

マーケットを見据えながら、質の高い品揃えを続ければ、いつか認めてもらえる店になっていくはずだ。そう思い、みんなで頑張った。

そして、また最近街の雰囲気が変わってきたような気がするのである。

…………………………………..

「三春屋」を過ぎ、しばらく歩くと「八戸ポータルミュージアム【はっち】」が見えてくる。7年ほど前に開業した公共施設である。

館内にはミュージアムショップを思わせるお土産店があり、またいろんな作品展を開催できる部屋や八戸の歴史を紹介するスペースなどが各階に併設されている。

昨今、このような性格を持った公共施設は、どの街でも見られるようになった。

しかし【はっち】は、デザインが特徴的で、モダニズムの感覚に溢れている。

お土産店に並べられている雑貨や本なども、かなり厳選されているのがわかる。ハードの面でもソフトの面でも、随所に「デザイン」が垣間見れるのだ。

そして今夏、大通りを挟んで【はっち】の真向かいにオープンしたのが【マチニワ】だ。

以前、八戸に来たときは工事中だったので、今回初めて目にしたのだが、その全貌を見て少し驚いた。ガラスと木を用いて、吹き抜けの空間を贅沢に使ったデザイン。

向かい側の【はっち】と呼応するように作ったのだろうか。確かにHPを見ると【はっち】と一緒に紹介されている。

【マチニワ】

もちろん、この【マチニワ】も公共施設である。

今後どのような使われ方をしていくのかはわからない。当然、市民の莫大な税金が投入されたのだろう。

この先、評価の高い施設として外部に紹介されていくのかもしれないし、無駄なハコモノとして紹介されることもあり得るのかもしれない。

しかしこの新しい建築が、再び街を元気にさせ、その結果人々が街を歩くようになったのだと思うし、それが「デザイン」のチカラだと思う。

我らが弘前の街には、市民会館をはじめとした「前川モダニズム建築」がいくつかあるが、ここ最近では街の中心地にできた公共建築には正直「デザイン」のチカラは感じられない。

もちろんこれは個人的な見解ではあるが。

弘前と八戸に店を展開していて感じることがある。

「弘前=津軽」は「えふりこぎ」が多い。だからお洒落をする人は昔から多い。自宅を建てるときもお金を使う。しかし公共に関してはケチである。

対して「八戸」は、あまりミエを張らない。だから昔からお洒落にお金を使う人はあまりいない。現に「FRINGE EAST」でお買い物するお客さんも、弘前に比べると慎重な方が多い。

でもミエを張らない分、ピースフルな人が多い。そして公のことにはお金を使う。

それが、店での売れ方や公共建築にも現れているのだろうか。

いや、これもまた、あくまで私個人が思い描くイメージでしかないのだが、でも【はっち】を手がけた建築家の前田アニキも似たようなこと言ってた気がする。

八戸の店のイケメンたちのことを書こうと思ったら、何やら堅い話になってしまった。

いや、でも、店は公共建築ではないけれど、店やスタッフの雰囲気ひとつが、その街の要素の一つをデザインするものだと思っているし、そのためにも「FRINGE EAST」のスタッフには頑張ってもらいたい。

そんなことを考えながらも、【はっち】のすぐ隣に、こんな小さな市場が並んでいるのが、また良いなあ〜と思ったりもするのだ。


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