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2018-03-27

マウンテンパーカ ② / 『 SIERRA DESIGNS(シェラデザイン) 』と『 THE NORTH FACE(ノースフェイス) 』


「ALL WHITE」 の珍しいシェラ

前々回の「マウンテンパーカ」に続けてすぐ書くつもりが、前回はチャリネタになってしまった。というわけで、大好きな「マウンテンパーカ」の話。

20代の頃、メンズクラブやポパイが提案した「ヘビーデューティスタイル」に触発されて、憧れの「SIERRA DESIGNS(シェラデザイン)」の「マウンパ」を手にしたはいいが、世の中の「ヨーロッパカジュアル」の台頭により、着る機会が少なくなってしまった。

そのヨーロッパの流れは、カジュアルからさらに「MODE」へと発展し、セレクトショップはパリコレやミラノコレに目を向けるようになる。いわゆる「海外のデザイナーズブランド」が注目されるようになり、カジュアルなウェアよりはコートやジャケットなど、クラシックなものが憧れのアイテムとなった。

20年ほど前は年に2~3回、パリやミラノ、たまにロンドンなどにも行った。今でこそ大御所のデザイナーになってしまった「ラフ・シモンズ」の初期の頃も買い付けしたし、「ドリス・ヴァン・ノッテン」のショーは毎回必ず見た。

そういった「パリコレ」「ミラノコレ」のデザイナーズブランドの流れは、かなり長い間続いたように思う。もちろん、今現在でも彼らのショーは洋服業界に大きな影響力を持つ。ただ、以前と違うのは価格が高騰してしまったことだ。レートの関係もあるのかもしれない。かつては競い合って若者が「デザイナーモノ」を買っていたものだが、今は高価な「デザイナーモノ」を買う大学生はほとんどいない。若者の洋服に対するパワーがなくなったという人もいるが、見方を変えれば皆賢くなったのだと思う。

しかし、洋服をデザインするデザイナーたちも馬鹿ではない。世の中のそういった空気をしっかりと読み取っているのだ。いや、そういう空気を読み取れるデザイナーこそが、洋服ビジネスの世界でも生き残っていくのかもしれない。

10年ほど前から、「MODE」一辺倒だったファッションに再びカジュアルの流れが入り始めた。もちろんいつの時代にも「MODE」とは別に、常にカジュアルは存在するが、この10年ほどで「MODE」と「カジュアル」の境目がなくなりつつあった。しかもセレクトショップには別の存在としてあった「クロージング」のセクションでさえも、「MODE」との境目、「カジュアル」との境目がなくなり始めていた。

特に昨今顕著なのが、異なるジャンルとの「コラボレーション」である。わかりやすい例が「デザイナーズとアウトドアとのコラボレーション」。最も代表的なものは「コムデギャルソン×ザ・ノース・フェイス」「シュプリーム×ザ・ノース・フェイス」、そして「サカイ×ザ・ノース・フェイス」など。なぜか皆「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス) 」なのである。

かつて、僕らが10代の頃、「アウトドアブランド」といえば「シェラデザイン」「LL・ビーン」「ザ・ノース・フェイス」であった。その後、セレクトショップが展開するようになると「ムーンストーン」「マーモット」「パタゴニア」が人気となった。さらに「アウトドアウェアのハイテク化」が進むと「アークテリクス」や北欧、東欧のマニアックなブランドがセレクトショップに並ぶようになる。

自分の中では「シェラ」と「ザ・ノース・フェイス」は同じような立ち位置にあったが、「ザ・ノース・フェイス」はなぜかアメリカの一般ピープルなイメージがあって、食指が動かなかった。一度「ノース」のマウンパを買ったが、どうもオッサンくさい気がして誰かにあげてしまった気がする。

その後、90年代に入り「ザ・ノース・フェイス」は裏原宿などのストリートファッションのジャンルで再ブレイクした。ラップミュージシャンやスケボーライダーたちの間で「ノース」が人気となった。しかし自分的にはどうもあの「ラッパースタイル」は馴染めなく、結局「ノース」を着ることはなかった。

しかし、ある時期を境にして「ザ・ノース・フェイス」は服飾業界の人間にも注目されることとなった。「THE NORTH FACE PURPLE LABEL(ザ・ノース・フェイス・パープルレーベル)」の登場である。このレーベルは「街でカッコよく着れる」ことをひとつのコンセプトとしており、アウトドアテイストはしっかりと残しながらも、シルエットや素材使いにとことん拘っている。もちろん「ザ・ノース・フェイス」の生産背景があるから作りの良さは保証されている。

いわゆる「アウトドアショップ」や「スポーツ店」には並ばず、主にセレクトショップを中心に展開されているラインである。そのときそのときのトレンドも反映されて、モードテイストなアイテムもあれば、最近ではビッグシルエットなストリートテイストも展開している。

その中でも個人的に気に入って着ているのが、オールブラックの「マウンパ」である。「シェラ」に比べるとシルエットもコンパクトであり、ジップを一番上まで上げたときのフードの形が抜群に良い。よくありがちな「ザ・ノース・フェイス」のロゴは見当たらず、裏地もボタンもすべて真っ黒である。

「ALL BLACK」

昨今人気のハイテクなスポーツテイストのパンツとの相性がよく、ニューバランスなどのスニーカーやモードなアイテムにも合わせやすい。ここ最近では着る機会が最も多いアウターとなった。あまりに着ることが多いので、来秋シーズンもこの「マウンパ」の色違いを買おうか迷っているところである。

このように、今の「ザ・ノース・フェイス」は企画力もあり、時流を察知する感性もある。多くのデザイナーズブランドがコラボレーションの相手に選ぶのもよくわかるというものだ。しばらくはこの「ザ・ノース・フェイス」人気は続くであろう。そして機能にも優れ、スタイリッシュなアウトドアウェアを取り入れた流れは、今後も支持されていくと思う。

しかし…ボタンダウンシャツを着て、ジーンズを履いたときは、決してスタイリッシュではない「シェラのマウンパ」を羽織ったほうが、なぜかしっくりきてしまうのだ。それがカッコよく見えるのだ。それは、自分が紛れもなく「オッサン」になった証拠かもしれない。


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