『 French Day 』 〜 SAINT JAMES / Josquin Des Prez / フレンチハヤシ 〜
ファッションに興味を持ち始めたのは、高校時代に流行っていたIVYスタイルが最初だったと思う。
「BROOKS BROTHERS」に憧れていたけど、地元では売っていなかったので、人気は「VAN」や「マクベス」だった。
後に「BEAMS」や「SHIPS」などのインポートショップ(その頃はまだセレクトショップという言葉はなかった)のオリジナルトレーナーがブームとなり、修学旅行のお土産としても大人気となった。
ファッションに興味を持ち始めた若者は、やがてそれらのショップが提案するアメリカやイギリスのブランドやアイテムを求めるようになった。
私は仙台で一浪し、そのときにインポートファッションへの興味を強く抱き始めた。
受験勉強もロクにせず、ポパイやメンズクラブを読み耽り、アメリカやヨーロッパのブランドをひたすら覚えた。
実は受験科目の中で地理だけは得意だった。小さい頃からいつも地図を眺めていた。
海外のブランドに興味を持ったのは、そういう傾向があったからかもしれない。
仙台に、そんな自分をインポートの虜にしたショップがあった。
「ギャップ&プロッグ」という店だ。英表記では「Gap & Prog」なのだろうか。今となっては思い出せない。
店は小さなビルの上の方の階にひっそりとあった。狭い店舗の中には、憧れの海外のブランドがぎっしりと並んでいた。
アメリカ「SMITH」のペインターパンツ、イギリス「Peter Storm」のゴム引きのパーカなど、雑誌でしか見たことのなかったアイテムたち。
中でも、自分が最も惹かれたのがフランスの「SAINT JAMES」のボーダーTシャツだった。
このボートネックの形状をしたボーダーTシャツ、いわゆる「バスクシャツ」こそが、私をインポートファッションの虜にした最初のアイテムだった。
セントジェームスは、フランス北部のノルマンディ地方で1889年に創業され、古くから漁師や船乗りなど海の男たちに愛されたブランド。
多くの著名人に愛されたことでも有名で、画家ピカソや芸術家アンディウォーホルなどが愛用していたことは、よく知られる。
自分も現代アートが好きだったこともあって、この「バスクシャツ」に惹かれたのだろう。
後に、自分が何十年も勤めることとなった店でも「SAINT JAMES」を取り扱うことができたし、自身でも色違い・型違いを何十枚も集めた。
今日、久しぶりに「バスクシャツ」を着てみた。
パッツンパッツンだった。
でもなんとなくフレンチな気分…と思い、食材をチェックしてみる。
「ブルゴーニュワインのフレンチハヤシ」というのがあった。賞味期限が数日前に切れていたが、問題ないだろう。
レシピを見ると、牛肉と玉ねぎが必要だった。玉ねぎはあったが牛肉はない。でもこないだの「水木の豚サガリ」があった。それを使おう。
ジャガイモや人参、いつものトマトもあるので全部使おう。
実はフランス料理はあまり食べない。というよりも、フレンチを食べる環境が昔からなかったし、どんなのがフレンチなのかよくわからないのだ。
でも、フランスのファッションやアート、建築は好きである。
ただインポートショップに並ぶフレンチブランドというのは少なく、やはりアメリカやイギリスが多く、最近ではイタリアものが多い。
私が好きなフランスのファッションというのは、フラン人がする着こなしが好きなのだ。
イギリスのクラシックなアイテムにアメリカのミリタリー物やエスニックアイテムを合わせたりする、クロスオーバーな感覚が好きだった。
粋なスタイルってやつかな。ピカソとかコルビジェのスタイルって、なんか粋な感じがします。
パッケージにはフレンチハヤシと書かれてあるが、そもそも「ハヤシ」って何なのか。
ちょっとググってみたら、語源についても諸説あるらしい。(ここでは省略)
確かなのは「ハヤシ」という言葉は、日本でできたもの。その「ハヤシ」に「フレンチ」がくっついているので…よくわからない。
ワイン仕込みということでフレンチなのかもしれないけど、今日はいろいろ入れちゃうので、津軽ジャイゴ風フレンチハヤシということに。
人参とジャガイモは、最初に焦げ目がつくくらい炒めてしまう。
そのあと、玉ねぎとトマトもぶち込んで、水を加え煮込む。煮込みつつ、ワインやコンソメを足しながらその気になる。
豚サガリは味付きなので別に炒め、いい感じに焦げ目がついたら鍋に合流させる。
あとはルーを入れてグツグツと弱火でひたすら煮込む。
使ったワインをグビグビやりながら、グツグツを覗き見しながら、フレンチを聴く。
いつもApioで歌っている「Josquin Des Prez」の『モテット&シャンソン集』
1500年頃の音楽なので、いわゆるフレンチとは違うかもしれないが、まあ料理も厳密にはフレンチとは言い難いので、良しとする。
気分がフレンチであればそれでいいのだ。
今夜も「ウメえ〜メえ〜」とヤギになりながら食べる娘に感謝しつつ、
私は、パツパツのキツくて苦しい「バスクシャツ」を脱いだ。
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