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2019-05-12

学校から見えた風景


娘が合唱部に入部したのは4年生のとき。

そのときは、6年生、5年生が充実していて、32人ほどの部員がいた。NHKコンクール(Nコン)に出場しても、他校に引けを取らぬ演奏をしていた。

昨年は、新入部員が少なく、卒業生の抜けた分を補うことができなかった。Nコンには25人で挑むことになった。

35人まで出場できるNコンでは、チカラのある学校はどこもMAXの人数で望む。大人の団体とは違い、やはり人数の多い学校が上位を占めることが常となっていた。

しかし彼らは、大人たちの予想を遥かに超える素晴らしい演奏をした。そして再び、東北大会へとコマを進めたのだった。→(NHK全国学校音楽コンクール青森県大会2018 【金賞】受賞)

令和元年。娘は6年生になった。

十数人いた先輩たちが卒業し、合唱部はわずか13人になった。

4月に部活に顔を出したとき、先生と子供たちが輪になって話し合いをしていた。コンクールに出たいかどうか、先生が一人一人に聞いていた。

多くの子供たちが「コンクールに出たい」と言っていた。

「金賞を取るために歌っているのではない」「たくさん応援してくれている人たちのためにも歌いたい」

(人数が少ないから今年は厳しいだろうなあ)…などと考えていた自分が恥ずかしくなるような、立派な意見ばかりだった。

しかし、娘は最後まで黙っていた。いや、娘は泣いていて、うまく答えられなかったのだ。「今まで先輩が築いてきたことを、私たちが壊してしまうかもしれない。それが申し訳ない」 泣きながらそんなことを話していた。

今年初めて、パートリーダーという役目についた娘は、自分なりに責任を感じているのだろう。先生ご自身も、(この人数でやれるのだろうか…)という思いがあったらしく、娘の考えていることに対しても「その気持ち、よくわかります」と、おっしゃっていた。

コンクールに出場すること自体は、素晴らしい経験だと思う。そこで、良い成績を収めることも、厳しい結果に終わることも、どれも得難い経験になるだろう。

しかし、それ以前に、こうしてみんなで話し合うということ。先生に言われたからではなく、自分たちで考えてみること。これは素晴らしいことだなと思った。

久しぶりに部活に顔を出した。

音楽室が近づくと、子供たちの元気な歌声が聴こえてきた。どうやら、コンクールに出るための課題曲を練習しているようだ。

私はしばらくの間、廊下に佇み、3階の窓からみえる風景をぼんやりと眺めていた。

音楽室のある3階から見た津軽の風景

薄曇りの空の中、真正面に岩木山がみえる。子供たちにとって、6年間見続ける風景だ。

とくに、3階の音楽室で練習を続けてきた子供たちにとっては、強く心に刻まれる風景になるだろう。そしてそれは何故か、淡く、儚い記憶となる。

私は音楽室のドアをノックした。中に入ると小さな新入部員が5人、先輩たちに混じって楽しそうに歌っていた。

さあ、今年も響かせよう。 18人の歌声を! 


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