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2019-10-19

ツール・ド・ツガル / 十和田湖滝ノ沢展望台デ猛省ス


 

たかだか20kmちょいのツーリングだと思って甘くみていた。でも考えてみたら、一昨年の岩木山ヒルクライムでは、10kmコースだったのに両脚が攣りまくったのを思い出した。

(これはヤバい)

私は少し焦り始めた。沢の水を飲もうかと思ったが、すでに勾配のある道を上り始めていたので、沢はかなり視界の下の方にあった。

 

何気なくジャージのポケットを探ってみる。何かガサッと音がした。

(ポケットに「2RUN」が入っているかもしれない!)

昨年のヒルクライムで脚が攣ることのないよう購入したサプリだ。一箱だけ購入したつもりが、なぜか定期購入になっていたらしく、二度目に配達された分がまだ残っていた。

(2018年6月23日のブログ→『チャレンジヒルクライム岩木山 2018』 明日に迫る 参照)

そんなに攣りまくるほど走ることはないと思い、それ以降の購入はキャンセルしたが、この二度目の分は一応キープしていた。それがラッキーにもジャージのポケットに入っていたのだ。

 

路肩に立ち止まり「2RUN」の袋を開けると、2粒入っていた。私は1粒だけ頬張った。なんとなくホッとした気持ちになり走り出した。心なしか脚が軽くなったような気がした。

それでもまだ滝ノ沢までは4kmくらいあるはずだ。激坂ではないが7%近い勾配はあるし、今の自分の脚なら十分攣ることもあり得る。

滝ノ沢に向かう九十九折の坂が始まった。木々に囲まれている道は朝方の雨でまだ濡れている。周りの景色を楽しむ余裕はなく、両脚と相談しながらゆっくりと脚を回した。あまり踏み込まないよう、引き脚を使いながら大きく脚を回した。

少しだけ勾配が緩くなっているところで脚を止め、「2RUN」の残りの一粒を口に入れた。残りは3kmほどだろうか。再び走り始めたところで、少し口の中に違和感を覚えた。

(しょっっっぺ〜〜〜)

「2RUN」が塩っぱいのだ。いや、最初の一粒も塩っぱいと思ったが、それほど気にならなかった。しかし2粒目が異常に塩っぱく感じる。

ふと思った。これはあくまで水分も補給しながら摂取することを前提としているはずだ。長い間走っていると、水分だけではなく塩分も失われる。だから水分だけでなく塩分も摂らねばならない。

おそらくこのサプリは、攣り防止のためにナトリウム成分がかなり多いのだろう。それを水分なしに2粒も口に入れたものだから、急激に口の中が乾き始めた。塩っぱさを感じたのは、きっとそのせいだ。

口の中だけではなく、明らかに唇も乾き始めたのが判った。

(こりゃ〜ますますヤバいぞ〜)

別にレースをしているわけではないので、本当にヤバかったら引き返せばいいだけの話である。が、やはりここは十和田湖の姿を少しでも目にしないと、ここまで走った意味がない。

どんな意味なのか、よくわからないまま脚を回していると、滝ノ沢へと向かう最後の直線が見えた。

(よし、ここまで来ればなんとかなる)

心なしか、再び脚が軽くなったような気がした。そして、すでに心の中では(本日のゴールは滝ノ沢展望台)と決めていた。

滝ノ沢から御鼻部山展望台までは、さらに7km、標高差300mのヒルクライムとなる。しかも勾配はかなりキツい。水分なしでは無理だ。

自分が大学生だった頃は、滝ノ沢展望台にも店があったはずだ。ちょっとした食堂やお土産店があったと記憶している。それが、いつの間にかなくなっていた。

十和田湖の周遊の道も整備され、休屋や子ノ口に行くのも昔に比べると随分スムーズになった。そのおかげで滝ノ沢も通過点のひとつに過ぎなくなったのだろうか。それでもしばらくの間は自動販売機があったはずだ。

しかし現在は、その自動販売機すら存在しない。年に一度、休屋側から滝ノ沢の激坂を死ぬ思いで上ってきていた自分にとって、その記憶だけはハッキリとしていた。

 

滝ノ沢の分岐点を示す青い標識が見えた。

ホッとしたような、そして少々不甲斐ない思いも抱きながら、滝ノ沢展望台にゴールした。距離20km、標高差500mのプチクライムだった。

 

滝ノ沢展望台

ロードバイクを担ぎ上げて、展望台の階段を上る。紅葉し始めた木々の向こうに、十和田湖が申し訳なさそうに少しだけ見えた。

御鼻部山の展望台まで行ければ、この数倍の広さを目にすることができる。それだけ300mの差は大きい。

しかし、この日はこれで十分だった。

いや、今の体力、実力、そして装備を考えれば、これで十分というだけの話であって…寝坊、準備不足、水分補給と、内容的には反省だらけのライドだったのは間違いない。

 

私はわずかに見える十和田湖を眺めながら、しばし一人佇んでいた。が、しばらくして自分がまったく落ち込んでいないことに気づいた。

こんなに反省だらけの内容なのに、である。考えてみれば、自宅から走ろうが、温湯から走ろうが、結果的に虹の湖からスタートしたが、そんなことは誰にもまったく関係のない話だ。仮に誰かに話したところで「ふ〜ん、それで?」という話なのだ。

まったく水分も摂れずに、攣りそうになりながら走ったとしても「へえ!そりゃヤバかったね!」とは言われるかもしれないが、5分後には忘れている話なのだ。

インスタグラムで「今自分がしている」画像を発信するのもよし。フェイスブックで今日の出来事を共有するのもよし。そして、こうして日記を書くのもよし。

しかし、多くの人にとって、「今日、誰かが何をしたかなど、他の誰も気にしないこと」なのだ。だから、反省はしても別に凹む必要もない。

 

再びロードを担いで階段を降り、展望台の下にある石碑の前で写真を撮った。この碑をちゃんと見たのは初めてのような気がした。

 

十和田湖 および 奥入瀬渓流

国立公園なのは知っていたが、天然記念物にも指定されているのだろうか。

 

紅葉シーズンだというのに、駐車場には一台の車もなく静まり返っていた。私はロードに跨り、重いギヤにチェンジして、さっき来たばかりの道を下ることにした。

さっきまでの猛省はすでに忘れ、温湯の温泉に気持ちを馳せながら、久しぶりにデカい声で米津玄師を歌い始めた。

「パプリ〜カ、花が咲い〜た〜ら、晴れた空に種を蒔こう〜!」

 

 


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