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2020-06-06

ツール・ド・ツガル / 西海岸を走る(鰺ヶ沢〜千畳敷)


 

先日テレビで、鶴瓶が鰺ヶ沢をロケしている様子が映っていた。「ここは漁師町です」と言いながら歩いていた。

「漁師町」と言うと、「漁師の町」と思うかもしれないが、れっきとした町名である。(もちろん元になったのは漁師が多かったからだろう)

昼飯を食べた「たきわ」のあるところは、「浜町」といい、国道沿いに「釣町」「漁師町」「富根(フネ)町」「淀町」と、海に関する町名が連なる。

 

腹も膨れていたので、ゆっくりと「漁師町」のあたりを走っていたら、「シャー!」という音とともに「こんにちは!」と、一人のサイクリストが颯爽と追い抜いて行った。オレンジ色のジャージに身を包んだ、カッコいいオジさんだった。

少しだけ追いかけようか?でも昼飯食ったばかりだしなあ…などと迷っているうちにオレンジ色のジャージは遥か彼方に消えていた。

 

集落が途切れると、向こうに中学校が見えた。

 

鰺ヶ沢中学校前

 

40数年前、鰺ヶ沢には「第一中学校」と「第二中学校」があった。鰺ヶ沢は面積が広く、昔は各集落に中学校も点在していたが、やがてこの二つに集約された。

私が通ったのは「第一中学校」だった。しかし、今はもうない。少子化とともに、この二つがさらに統合され「鰺ヶ沢中学校」となった。かつて、「第二」だった校舎が使われることとなった。

「第一」は近年解体され、跡地には新しい町役場が竣工するらしい。統合され、「第一」の校舎が無くなると聞いた時は、なにか負けたような気持ちになった。

昔から、小学校も中学校も、中村川を挟んで妙なライバル意識があったのだ。だから自転車に乗って港の方へ行くのは、けっこう緊張したものだった。

 

赤石地区を走り過ぎ、やがて北金ケ沢の集落が見えてきた。私はバイパスから逸れ、集落の方へ入って行った。いつもの場所へ行くためだ。

このブログにも何度か登場した北金ケ沢のいつもの場所。道幅は狭いが、交通量が少ないので、左に五能線、右に日本海を見ながらのんびり走ることができる。海沿いを走るのが目的なのに、あえて山の中のバイパスを走る必要はない。

線路沿いには、かなりの年月が経過していると思われる古い家屋が数軒ある。しかし、手入れの行き届いた花木が綺麗に並んでいて、その光景を目にしながら走るのも好きだった。

 

線路沿いの光景

 

いつもの場所にロードを停め、海の方へ歩いてみた。

ちょうど防波堤の間から漁船が戻ってくるのが見えた。今日は大漁だったろうか。

船の向こうに、いびつな形をした岩木山がうっすらと見えた。

 

北金ケ沢漁港

 

いや、「いびつ」だと思うのは、自分が日々弘前から岩木山を見ているから感じるだけのことで、北金ケ沢に住む人々にすれば、これが「おらほの岩木山」だ。

津軽の中心を、なんでも弘前において考えるのは良くない。視野も見識も狭くなる。鰺ヶ沢生まれの自分がもっとも感じていたことではなかったか。

早朝であればまだしも、暑い日の昼間ともなると空気が霞む。それでも薄青色の津軽富士が、わずかばかりの残雪とともに、「岩木山」のシルエットを描いていた。

 

港からロードバイクの方に戻りかけると「シャー!」とオレンジ色が目の前を駆け抜けていった。

私が追い抜いたというのではないことは、明らかだった。きっとどこかで昼飯を食べていたのだろう。オレンジ色が広いバイパス道ではなく、この狭い線路沿いの道を走っていったことに、私はなぜか親近感を抱いた。

 

(列車が通らないかな?)とも思っていたが、この五能線で偶然列車に出会うのは、かなりの確率で低い。私は諦めて、千畳敷に向かって走り出した。

 

昨年、千畳敷を訪れたときは、「民宿 田中」の豪快な海の幸定食に舌鼓を打ったのだった。

(2019年7月3日のブログ→ 豪快すぎる「千畳敷のおかちゃ定食」 / 千畳敷 『食堂・民宿 田中』 )

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少し話はそれるけれど、「舌鼓」はなんと読むのだろうか?「舌つづみ?」か「舌づつみ?」か。

正解は「舌つづみ」である。なんとなく「舌づつみ」の方が耳に馴染んでいるけれど、それは誤りなのだそうだ。だが、江戸時代の頃から「舌づつみ」と訛り始めたらしく、この言い方も定着したのだとか。(音位転倒が起こった例として辞書にも載っているらしい)

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残念ながら「民宿 田中」のおばちゃんは、玄関先に居なかった。(ま、居たらなんか食べなきゃいけないから、良かったのかも…)と思ったが、やはり少し寂しい気もする。

 

 

千畳敷

 

私は2軒隣の海の家の方に行って、自販機でスポーツドリンクを買った。すぐそばの階段に腰をおろして、休むことにした。

どうやら、こちらの海の家は休業中らしい。もしかしたら、店を辞めてしまったのだろうか。ドライブで訪れる人はいるけれど、今どき、なかなか民宿に泊まる人は居ないのかもしれない。

外出自粛の影響がまだ残っているのだろうか。暑い一日ではあるが、人出はまばらだった。小さい子を連れた家族連れとカップルがひと組ずついた。

私は階段に座り、遥か遠くの水平線の見ていた。まっすぐに見える水平線。しかし端から端までを見渡すと、わずかにだが曲線を描いているのがわかる。地球は丸い。

 

「フォ〜ン!!!」

という大きな音で我に返った。列車が千畳敷駅に入ってきた。五能線の鈍行列車だった。

 

 

しばらくして、列車は再び「フォ〜ン」という音を鳴らして、駅を発つ。

私は、鈍行列車を追いかけるようにしてロードを走らせた。

 

 


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