「現在・過去・未来」 / 渡辺真知子&八神純子
中学校は春休みに入っている。娘の友達が泊まりに来た。
「オッさんはジャマ〜!」とばかりに、バン!とドアを閉め、部屋の中でキャッキャとなにやら楽しそうに話をしている。
自分が中学生だったときも、そうだった。友達が泊まりに来たり、友達のウチに泊まりに行ったりすると、気持ちが異様に高ぶったことを思い出す。
ひとりでテレビを見る気にもならなかったので、PCでYouTubeを覗く。
それにしても、YouTubeを観ていると、サイドバーにオススメ動画をぶち込んでくるAIは、いったいどんな頭脳をしているのだろう。
関連するジャンルやアーティストが出てくるのはわかる。が、たまに「え!?」というのが出てくる。
(ああ、この歌。アーティストの名前も題名も忘れてしまってたけど、あの頃、すごい好きだった歌だ)
奥深い心の底まで覗き込まれているのでは…と思うほどだ。
3年以上も前に、深夜放送の「コッキーポップ」のことを書いていた。(2017年10月1日のブログ ラジオの深夜放送 / 「オールナイトニッポン」&「コッキーポップ」)
中学から高校にかけての自分は、深夜放送の虜になっていた。若者に支持される音楽は、フォークからニューミュージックへと変わりつつあったが、その音源はテレビではなく主にラジオからだった。
「コッキーポップ」から流れてくる音楽は、どれも都会的でお洒落なものが多く、田舎のジャイゴワラシは東京という街に思いを馳せた。
八神純子の「思い出は美しすぎて」は、好きな曲のひとつだった。
都会的なピアノのメロディ。地声とファルセットの区別がつかない美しい歌声。郷愁を誘うサンバホイッスルの音。そして2番がサビだけというのも、なぜかお洒落。
1978年の映像。「思い出は美しすぎて」
このときの彼女はまだ20歳で、表情もまだあどけない。が、「歌姫」と言われただけあって、せつなさをも感じさせる高音の伸びが素晴らしい。
高校2年だった私は、深夜の「コッキーポップ」で、幾度となくこの歌を聴いた。そして今、YouTubeでこうして聴いているが、音楽が全く古くない。
ふと、サイドバーのオススメ動画を見ると、八神純子ではないアーティストの顔があった。渡辺真知子だった。
「迷い道」「カモメが飛んだ日」「ブルー」などのヒット曲のある渡辺真知子。「現在、過去、未来〜」と衝撃的な歌いだしで始まる「迷い道」は、私が高校1年の頃の曲で、これも深夜のラジオでよく耳にした曲だ。
しかし彼女の歌は、都会的なイメージとは少し違っていた。どちらかといえば、ポップスというか歌謡曲的な要素があって、歌声そのものもパワフルでエネルギッシュ。
あの頃の渡辺真知子も20歳くらいだったが、高校生の時分から見ると少しオバさんぽく見えていた。あのパワフルな歌声がそう感じさせていたかもしれないし、ファッションもそんなイメージだった。
渡辺真知子と八神純子は仲が良かったらしく、当時八神のラジオ番組に渡辺がゲストで出たときに、それぞれが相手のヒット曲を歌うというのがあった。(渡辺が「思い出は美しすぎて」を歌い、八神が「ブルー」を歌った)
音源を聴いたことがあるが、二人とも「歌姫」と言われるだけあって、どちらも素晴らしい歌声だったことを覚えている。
渡辺真知子のヒット曲に「唇よ、熱く君を語れ」という曲がある。当時のカネボウのCMで流れていた。
あの頃の資生堂やカネボウのCMは、お洒落でカッコ良かったな。化粧品のCMに限らず、お酒や車のCM、全てがカッコ良かった気がする。
まあ、CMはカッコ良かったけど、この「唇よ、熱く君を語れ」は、これまでの曲以上に元気でパワフル。あまりに元気すぎて、好んで聴いてみようと思ったことはなかった。
でも、YouTubeのAIがリコメンドしてくれた動画だから、ちょっとだけ聴いてみよう。
そして、驚いた。
1980年の映像。
オバはんだと思っていた渡辺真知子。けっこう可愛いではないか。いや、こんな可愛かったっけ?
確かに全体に引いたときの映像になると、スタイル的にちょいオバはんぽいところはある。でも十分にカワイイ。ま、自分が歳をとっただけかもしれない。
それにしても、「歌うことが好きでたまらない」って感じの表情で歌うなあ。
現在・過去・未来。
40年前からみれば、未来である現在の2021年。お二人とも変わらぬ美しいボイスで歌い続けている。歌姫は健在だ。
安ワインを飲みながら、歳をとったジャイゴワラシは、若かりし二人の歌姫の映像を観る。都会に思いを馳せることはなかったが、40年前のあの頃に思いを馳せた。グビグビ
当時は化粧品・酒類・自動車のCMが良いそうです
キリン・シーグラムのツール・ド・フランスと
サントリーのサグラダ・ファミリアが良かったです