ツール・ド・ツガル / 追悼ライド『雨の十三湖一周』
雨の音で目が覚めた。
でも助かった。夢の中で妻と喧嘩をしていた。
喧嘩の原因は向こうにあったが、
そもそも亡くなった人に勝てるわけがないのだ。
スマホを見たら、まだ2時だった。
迷いながら、
夢の中で、また喧嘩をしたら、どうせ負けるのだろう。
「こめ米ロード」は、相変わらず真っ直ぐだった。
この路が出来た頃、場所によっては「米米ロード」と表記されていた記憶がある。
故に、「コメコメロード」と呼んでいた人もいた。自分も「コメコメ」だと思っていた。「米米」といえば「米米CLUB」を思い出す人は多いはずだ。
本当の読み方は「こめ米ロード(こめまいロード)」だった。しかし「米マイロード」と表記している場合もある。紛らわしい。紛らわしいネーミングは良くない。
いっそ「
そういえば先週もネーミングの話をしていた。ネーミングに造詣が深いわけでもないし、興味があるわけでもない。
そんな「こめ米ロード」をひた走っていると、いつの間にか十三湖に着いた。
変わらぬ風景。
いや、8年前に比べると風力発電の風車がいくつも建っていた。景色は変わらぬようで変わっている。
8年前は、ここの『しじみ亭 奈良屋』という食事処で「しじみラーメン」を食べた。
十三湖の「しじみラーメン」といえば、湖が日本海へ流れ出る場所にある『元祖しじみラーメン 和歌山 本店』が人気だが、『奈良屋』もよく知られる。(⇨ 「十三湖のラーメン /『元祖しじみラーメン 和歌山 本店』)
↑でも書いていたが、やはりここに来ると、(なぜ青森の十三湖なのに奈良だったり、和歌山だったりするのだろう)と思ってしまう。
が、あまり深く考えずに、今回は8年前と同じように『奈良屋』で「しじみラーメン」をいただくことにした。
景色は少し変わっていたが、ラーメンはあの時と同じように美味しかった。
塩分と水分を一気に補給し、いざ十三湖を一周!と外に出る…と
なんと、雨が降っていた。
天気予報では、五所川原市もつがる市も中泊町も、日中はずっと晴れマークだったはず。全く天気予報は当てにならない。
しかし、雨の降る中を走るのは過去に何度もあった。ひとりでのツーリングであれば多少の雨は気にならない。
それにしても先週は暴風、今回は雨と、なかなか試練を与えてくれる追悼ライドである。
2度ほど、プチクライムをすると「道の駅 十三湖高原」に出るが、そのまま素通りする。
雨が降っていたので、とにかく早く「十三湖中の島」に到着したかった。
ケツから背中が冷たい。おそらく「スパネ」が上がっているのだろう。
「スパネ」とはなかなか表現力のある言葉だ。標準語だと「跳ね上げ」になるのだろうか。どうも言葉にチカラがない。
雨が降っていると景色を楽しむこともなく、こうしてネーミングとか津軽弁とか、つい国語を「ひとり勉強」しながら走ってしまう。
でも国語はあんまり得意じゃなかったな。
国語の勉強をしているうちに「中の島」に着いた。
路面は濡れていたが、蒼空ものぞき始めていた。
「中の島」には数軒の食堂や土産物屋があるが、そのほとんどが閉まっていた。
コロナの影響なのか、この時期はいつもそうなのかはわからない。しかし、この紅葉シーズンにこの辺りを訪れる観光客は少ないかもしれない。
私はそのまま「十三湖大橋」に向かった。
岩木川が最終的に海へと流れ込む場所は、天から射す光で輝いていた。
ロードバイクが美しいシルエットを作っていた。
その様子を写真に収めると、ロードバイクのすぐ後ろに、白い光の玉が写っていることに気づいた。
(あれ?)と思い、もう一枚撮ると、やはりすぐ後ろに写っていた。
(そうか… )
私はしばらくの間、この橋の上にいた。
頬が濡れているのは雨のせいだろう。
暴風そして急な雨と、天候に恵まれなかった追悼ライドだったが、最後は日が射してくれた。
その日が射し始めた空を仰ぎながら、私は、十三湖をあとにした。
コメントを残す