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2022-04-29

ツール・ド・ツガル / 大鰐温泉チャリグルメ紀行 〜『ロイヤル激坂』を2年ぶりに登攀ス〜


 

大鰐という街は、自分の好きなモノを満たしてくれる稀有な場所だ。

ロードバイク、温泉、そして美味いもの。写真も撮ろうと思えば、興味をそそる被写体があちらこちらに点在する。

弘前からは片道15kmほどと、そんなに距離があるわけではないが、温泉を楽しむ目的もあったので、ロードを車に積み込み出発した。

 

昨年も一度だけロイヤルの激坂に挑んだが、そのときは骨折のリハビリライドだった。

MTBにスニーカーというスタイルでは、撃沈は目に見えていた。( ⇨ ツール・ド・ツガル / リハビリライド「大鰐ロイヤル激坂」〜リフト乗り場でギブアップ

今年も練習という練習はしていないし、10%増量サービス中である。

先日、鯵ヶ沢を往復しただけで、身体はガチガチ、ボロボロになった。

 

大鰐ロイヤル激坂は、麓の街から頂上までは約6km。

距離はたいしてないが、勾配はハンパない。最も急なところでは、18%ほどもある。

ヒルクライムをやらない人にとって18%という数字はピンとこないと思うが、「柔道一直線」の一条直也の必殺技『地獄車』が永遠に地獄の底まで転がり落ちていく…くらいの激坂だ。

 

今の自分にとって、この6kmを上りきるのは、かなり厳しい。

以前は、「脚をつかずに上りきろう」「脚をつくのは2回までにしよう」と目標を決めてトライしていた。

今回はとにかく上りきることを目標にした。

脚は何度ついても良い。10回でも20回でも良い。できれば10回までにしたいけど。

確か、九十九折のカーブが7〜8回ほどあったはずだ。そのカーブ全てで休んでも、10回の休憩で登攀できる。

 

「さかえ食堂」のある最初の激坂。左上に見える頂上を目指す。

 

とにかく脚に負担をかけぬよう、ゆっくりと上る。

タイムを競っているわけではない。

 

カツカレーの美味い「さかえ食堂」を過ぎると、リフト乗り場が見えてくる。

ここが一番キツい。勾配20%近くあるんじゃないだろうか。

脚が止まらぬよう、蛇行しながら走る。走るという形容はもはや当てはまらない。

 

 

リフト乗り場より下界を望む。

 

1回目の休憩。

下界の街が美しく見える。まわりでは桜がちょうど良い感じに咲いていた。

昨年はここでギブアップしたが、今年はここからがスタートだ。

とにかく脚に負担をかけぬよう、ゆっくりと上る。

タイムを競っているわけではない。

 

しばらく上ると、ジャンプ台が見えてきた。

 

ジャンプ台

 

2回目の休憩。

疲れたわけではないが、このジャンプ台に来ると必ず立ち止まってしまう。

そういえば、今年の冬季オリンピックの女子ジャンプは悲運だった。

そういえば、高梨沙羅選手は現在弘前大学に在学と聞いたが、お会いしたことはない。

 

ここからが再び激坂の始まり。

とにかく脚に負担をかけぬよう、ゆっくりと上る。

タイムを競っているわけではない。

このキツい坂の向こうのカーブに少しだけ広くなっているところがある。そこまでは頑張る。

 

引き足を使って、なるべく大きく脚を回す。

カーブが見えてきた。

たまに蛇行しながらゆっくり上る。本当は蛇行は良くない。危ないからだ。基本はきちんと左側を走る。

カーブのところに来た。落ち着いてペダルからヴィンディングを外す。

 

3回目の休憩。

予定通りだ。あと7回は休める。

 

呼吸を整える。

耳を澄ます。

ざわざわと木々の声が聴こえる。

ゴォーと、遥か空の上に飛行機の音が聴こえる。

 

リスタート。

再び、引き足を使って、なるべく大きく脚を回す。

幸い、まだ脚にはキテいないようだ。この調子なら上りきれるかもしれない。

 

その時。

「ガチャ!!」

突如、右脚のヴィンディングが外れた。

「あぶね!」

咄嗟にロードから降りた。なんとか落車せずに済んだ。

 

思いがけず、4回目の休憩。

(いやあ…こんな激坂の途中で降りるのはキツいなあ)

坂がキツいとリスタートも難しい。

少し歩きながら良さそうな場所を探す。

すると、少し先に看板が見えてきた。

 

 

「減速 願います」

 

すいません。

もう、これ以上減速できません。

 

リスタートできそうな場所を見つけた。

気持ちを整えて再び走り出す。焦ることはない。

タイムを競っているのではない。

誰かと競っているのではない。

 

では、自分はいったい何と競っているのだろうか。

以前であれば、昨年の自分には負けたくない…という思いで激坂を上った。

しかし、岩木山ヒルクライムを目指して頑張っていた頃の自分に、今の自分が敵うはずもない。

 

では、何と競っているのだろうか。

今の自分である。今、この激坂を上っている自分である。

 

そして、競っているのではない。

対峙しているのだ。

いや、そんな大それたものでもない。

会話しているだけだ。

 

「おい自分。相変わらずオセエな」「おい自分。けっこう頑張ってるじゃないか」

「おい自分。こりゃ上れるぞ」「おい自分。俺らアホだな」

 

知らぬうちに、蛇行をせずに淡々と真っ直ぐ上っていた。

次はどこで休憩しようかなど、考えずに上っていた。

 

やがて、目の前に蒼く美しい空が現れた。

 

山頂より八甲田山を望む。

 

 

山頂より岩木山を望む。

 

「ウヒョー!」

 

東に八甲田、西に岩木山を望む、ロイヤル激坂の山頂。

4回の休憩で辿り着くことができた。

 

まだ、もう少し。この先、頑張れるような気がした。

 

 

 


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