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2019-11-27

京都散策記 / 「UNIT」&「御菓子司 龜末廣」


 

京都を訪れたのは、8年ぶりだろうか。

そのときは、東京で仕事を済ませ、夕方に新幹線で京都に向かった。夜に取引先の方と、風変わりなカレー屋でカレーを食べながら酒を飲み、翌朝に河原町界隈を散策して東京に帰るという、なんとも慌ただしい京都旅だった。

今回の京都。2泊3日ではあるが、メインは「全日本合唱コンクール全国大会」で歌うこと。自由時間は、1日目の午後と3日目の午前に、それぞれ3時間ほどに限られた。

 

京都といえば、やはり歴史的に価値のある神社仏閣の数々。しかし、3時間の限られた時間では、その建物の悠久たる時間を感じることはなかなか難しい。

確かに、実物を自分の目でみる、ということは大切なことである。しかし観光ツアーよろしく、見て写真を撮って移動して、次を見て写真を撮って移動して…という確認作業の繰り返しは性に合わない。

かといって何れか一つを選べと言われると、これまた難題である。建築は好きだが、歴史には疎い。結局ガイドブック(WEB上の)を参考にすることになるのだけど、京都のマップの上には無数の神社仏閣のイラストが描かれていた。

 

京都に来たからといって、必ずしも神社仏閣を巡る必要はない。あまり目的も持たずにのんびり歩くのもいいだろう。

そんな自分に都合のいい答えに頷きながら、一人で河原町界隈を歩き出した。

鴨川と並行して流れる「高瀬川」という小さな川が街中を流れている。その川沿いにある「木屋町通」を歩く。通りの両側には、小さなショップが立ち並ぶ。

 

木屋町通から望む

通り自体は、そんなに人通りは多くない。が、三条の交差点に出ると、いきなり多くの人が道に溢れていた。そのほとんどは観光客で、さらのそのほとんどは外国の方だ。

交差点を渡ると、通りは再び静けさを取り戻す。私は、川沿いをそのまま真っ直ぐ北へ歩いた。

「目的を持たずに歩く」と書いたが、全く目的がないわけではなかった。「木屋町通」の突き当たりに「UNIT」という小さなセレクトショップがある。私は、その小さなお店に行くため、この通りを北に歩いていた。

通りの突き当たりに来ると「ARTS & SCIENCE」のショップがあった。京都らしく、白い壁に覆われた和風の外観。小さな窓から中を覗くと、高そうなブーツが並んでいた。一瞬、入ろうかと思ったがやめた。時間は限られている。

通りの向かい側に小さな店のウィンドウが見えた。通りを渡り、その店のドアの前に来るとガラス越しに人の姿が見えた。私は、ゆっくりとドアを開けた。

「いらっしゃいませ!」

と挨拶をしてくれたスタッフに、笑顔で小さく会釈をした。すると、彼は少し驚いたような表情をした。

「本間さん!」

「UNIT」のオーナー橋口さんは、8年前にお会いしたときと変わらぬ穏やかな笑顔で、私の名を呼んでくれた。

 

「UNIT」オーナー橋口さん。

橋口さんとは、8年前に共通のメーカーさんの紹介でお会いしたのが初めてだった。それ以来の再会ではあったが、日頃からそれぞれの店のブログを見たりしていたので、お互いの顔を忘れることはなかったようだ(笑)

「UNIT」は小さなお店ではあるけれど、今の時代のスタンダードなウェアや小物がセレクトされていて、私のようなオッさんにはホッとするようなお店だ。

スタッフは橋口さんお一人。それだけに、彼の拘りや気遣いがお店の隅々まで行き届いていて、心地よい空間となっていた。

少しの時間ではあったけど、お店に置いてあるいろんなブランドのお話や、京都でのいろんなお店の話などを聞かせていただいた。

お一人で店を切り盛りするのは大変だと思うけど、頑張ってくださいね!

(ブログのご紹介 → 「鴨川のほとり 京都二条のSELECT SHOP『UNIT』のブログ」

 

 

「UNIT」をあとにし、私は西に向かって歩いた。

京都市役所の前の大きな通り「御池通」を「烏丸御池」に向かって歩いた。京都で、もう一軒訪れたい店があったのだ。

 

弘前にある和菓子屋「大阪屋」といえば、弘前に住む人なら知らぬ人はいない、東北でも指折りの老舗。(「大阪屋」/ 青森の魅力 より)

その「大阪屋」のKさんから私にメッセージが届いた。(Kさんは、よく私の店にお買い物に来てくださるのだ)

「本間くん、京都行くんだってね。京都行くんなら、絶対この店に行ってきて」 

「じゃ、時間あったら行ってみますね!」 

「時間なくても行って!♫」(笑)

そんなKさんのリコメンドに後押しされて、私は「御池通」を西に向かって歩いた。

「烏丸御池」交差点手前の小さな道を左に入る。すると、その店はあった。

 

「御菓子司 龜末廣(かめすえひろ)」

「歴史を感じさせる」という安直な言葉で表すのは、気が引けてしまうほどの風格のある佇まい。

看板(と言っていいのか?)に書かれてある店の名を読むのも難儀を極めるが、「御菓子司 龜末廣(おかしつかさ かめすえひろ)」と読むらしい。

京都には多くの和菓子屋さんがある。多くの店は外から見えるよう、お菓子がきれいに陳列されている。

しかし「龜末廣」は、外からは中の様子を窺い知ることはできない。私は大きな暖簾をくぐり、重そうな戸(実際重い)を開けた。

店の中に入ると、その重厚感に圧倒される。が、一見さんは寄せ付けないという嫌味な感じはなく、むしろ温かみを感じさせる雰囲気。

奥から女の店員さんが出てきた。私は、少しだけ時間をおいてから尋ねてみた。

「実は弘前の大阪屋さんから紹介されて、伺ったのですが…」

店員さんは「あ!そうですか。少々お待ちを…」と言い、店の奥に引っ込んだ。すると、今度は男の店員さんが出てきた。

「Kさんに、ぜひ立ち寄ってほしいと言われて来ました」と言うと、「ありがとうございます」と、少しはにかんだ様子で答えたその青年は、Kさんの息子SOHさんだった。

現在は弘前を離れ、ここ「龜末廣」で修業中とのこと。SOHさんは、「大阪屋」と「龜末廣」の繋がりや、店で人気のあるお菓子のことなどを、丁寧に説明してくださった。彼の言葉は、すでに京都弁になっていた。

弘前に帰るのは2日後の夜になるので、私は少し日持ちするお菓子を選んだ。帰り際に一枚だけ写真を撮らせていただいた。

SOHさんは、最後まではにかんだ表情をしていた。

 

「龜末廣」にて修業中の好青年

弘前からは千km以上も離れた京都だが、その京都で弘前出身の方に出会うというのは、なんとも言えず嬉しいものだ。

私自身はつい数時間前まで弘前にいたのだが、彼にとっては久しぶりに会った津軽人だったかもしれない。さぞや驚いたことだろう。

 

コンクール本番を翌日に控え、何故か私の心は、ほんわりと温かくなった。

 

「御菓子司 龜末廣」

京都府京都市中京区姉小路烏丸東入

定休日:日祝日

 


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